
ダイエット=体重が落ちる、と定義するのであれば、ストレッチには、残念ながら、ダイエット方法としては即効性がありません。体重を落とすためには摂取カロリーより消費カロリーが上回る必要がありますが、ストレッチで消費するカロリーはそれほど高くないからです。それでもストレッチを習慣にしている人に、スリム美人が多いのは事実。何故か? 実はストレッチとダイエットには、いろいろと相関性があるのです。
ストレッチと消費カロリーの関係

tofu
たとえば体重50kgの女性が30分ストレッチをした場合の消費カロリーは、なんとたったの60kcal。食品換算すると木綿豆腐1丁程度です。
1回の食事で、男性なら800kcal、女性でも650~750kcalくらいは摂取するもの。外食したり、お酒をプラスしたりするとあっという間に1000kcalを超えます。
たとえば1日3食しっかり摂れば、トータルの摂取カロリーは1日で2000kcalを切るくらいになります。生活基礎代謝を考えたとしても、ストレッチくらいの運動では摂取カロリー<消費カロリーとはなり得ません。脂肪体重を1kg落とすためには約7000kcal燃やさないとなりませんから、なんと58時間以上もストレッチをし続けないとならないことになります。しかもその間、食事はまったく摂らないと仮定して、ですよ? あまりの非現実的な話に、クラクラしてしまいそうですね。
それでもストレッチが体にいい理由

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それでもストレッチは、習慣化したほうがいい! そう断言できます。なぜかというと、ストレッチだけでヤセるのはなかなか難しいかもしれませんが、太りにくい体をつくることはできるからです。つまり、ダイエット=体重を落とすことには直接貢献しなくても、ダイエットを応援するくらいの効果はあるということ。ストレッチはダイエットのチアリーダーなのです。
取り組みやすい、続けやすい
女性のなかには運動が苦手だ、嫌いだという人も少なくありません。そういう人でも、ストレッチなら安心。ケガのリスクも少なく、安全で、疲れないからです。暑い季節じゃなければ汗もかきませんし、わざわざスポーツウェアに着替える必要も、どこかに行って習う必要もありません。そのため、非常に継続しやすく、習慣にしやすいといえます。1パーツ30分で伸ばしたとしても、かかる時間はトータルで15分強、このあたりも取り組みやすい理由になりますね。
体が柔らかくなる
ストレッチは柔軟ともいわれるくらいで、続ければ必ず体が柔らかくなります。この「体が柔らかくなる」にはふた通りの意味があって、1つは関節が柔らかくなること、もう1つは筋肉や脂肪などが柔らかくなることです。実はダイエットの観点からいうと、大切なのは後者のほうですが、順番に説明していきましょう。
まず、関節が柔らかくなるとどんなメリットがあるか。まず、ほかのスポーツをしたときにケガをしにくくなることが挙げられます。学生の頃、体育の授業でも、準備体操でストレッチの要素が入っていたのではないかと思います。モモ上げや軽いダッシュなど、心拍数を上げるアップはそのあとです。この場合、準備体操はいきなり硬い体のまま動き出してケガを負うのを防ぐ目的で行います。
また、柔らかい関節をもっていると、日常生活でも疲れにくくなります。これは、体が硬い人と柔らかい人が同じ動きをしようと思ったら、硬い人は余計な力が入りやすいという理由がひとつ。もうひとつは、同じ動きをするのにも、体の硬い人は柔らかい人よりも余分なエネルギーが必要だ、ということが挙げられます。
次に、筋肉や脂肪が柔らかくなるとどんなメリットがあるか、ですが、筋肉が柔らかくなると基礎代謝がアップします。血行もよくなるため、体温が上がります。そう、ヤセやすい体に変わるのです。
一方で、脂肪は柔らかいとそのぶん、燃えやすくなります。硬くてガチガチの脂肪はいわばセルライト。セルライトとは簡単にいえば老廃物と脂肪がくっついて肥大化した、脂肪のお化けのようなもの。このお化け、なかなか成仏してくれません。成仏してもらうためには、まずは血行を良くして老廃物の排出をスムーズにし、脂肪を柔らかくして燃焼しやすいタイプに変える必要があります。そのためにはストレッチが有効なのです。関節を柔らかくするためのストレッチが準備運動なら、この場合のストレッチは整理体操の意味合いが強いといえます。スポーツをしたり、1日仕事や家事をしたりしたあとの私たちの体には、疲労物質である乳酸が溜まっています。ストレッチはこの乳酸を飛ばしてくれるのです。
リラックス効果、安眠効果で美肌にも!

young woman asleep in the bed
仕事が煮詰まったり、考え事をしすぎたりすると、思わず肩に力が入ります。んーっと大きく伸びをするだけで、気持ちがすっきりする、なんていうことはありませんか? そう、ストレッチには、心地よい伸びと同じ、リラックスの効果もあるのです。
寝る前の数分、簡単なストレッチをするだけで、1日の疲れや体のコリを解消することができます。また、ストレッチをすることで、脳も自然にオンからオフへ切り替わります。つまり、副交感神経が優位になるということ。また、体が十分にリラックスすると血流もよくなります。先程お話しした「体が柔らかくなる」効果ともリンクしますが、血流がよくなることによって、栄養や酸素が全身に行きわたるため、老廃物の排出が促進されるので疲労回復も早まる――つまり、ぐっすり眠れて、翌朝に疲れを残しません。
また、ストレッチを就寝前に習慣づけていくと、ふしぎなことに、ストレッチをするだけで眠気を感じるようになってきます。そう、いい睡眠の呼び水になるのです。
いい睡眠の美容効果はあなどれません。とくに、眠りについてからの3時間はいわゆるシンデレラタイム。ストレッチによる寝つきの良さがどれだけ美肌に影響するか――これはチャレンジしてみる価値がありそうですね。
おすすめストレッチ
では、ここでできるだけ効果の上がるおすすめストレッチを紹介していきましょう。まず、体の動きを制限しない服に着替えてください。といっても、汗をかくわけではありませんから、パジャマや部屋着、夏ならTシャツにショートパンツなどで十分です。
また、実は柔らかい体には水分が必須です。水は必ず用意しておきましょう。できれば常温がオススメです。冷たすぎる水は胃がびっくりしてしまうからです。
人間の体の60%は水分です。しかし、年齢とともに失われていき、高齢者になると50%前後になるといわれています。一方で生まれたての乳幼児の体内水分量は80%。確かに、赤ちゃんの体はとっても柔らかいですよね。つまり、体内水分量の高い体は柔らかいということがいえます。
量ですが、とくに激しい運動をする場合を除いて、人間が1日に失う水分量は1.5L~2.0Lですから、同じだけの量を補ってあげる必要があります。ストレッチによって水分を失うということはほとんどありませんが、1日の終わりにやるのであれば、少し多めの水分補給を心がけましょう。
最後に、先程挙げた「取り組みやすい、続けやすい」「体が柔らかくなる」「リラックス効果、安眠効果」の3つの効果アップを狙うなら、お風呂に入ったあと、就寝前のタイミングがベスト。入浴で体がほどよく温まったところでお水を飲みながら取り組んでみて。最後にトイレを済ませてベッドに入れば、代謝が上がり、血流がよくなり、副交感神経が優位になった状態で眠りにつけます。体じゅうに酸素が行きわたり、老廃物を回収し……気持ちのよい朝を迎えることができるはずです。
次にパーツごとのストレッチを簡単に紹介していきます。
肩・腕
1.ひじを曲げて、手のひらを背中に軽く当てます。
2.反対の手で曲げたひじをゆっくりと押して数秒キープ。
1.右手を体の前にまっすぐ伸ばします。
2.反対の手を右手の前腕に当て、左の肩の方向にグッと近づけて数秒キープ。
3.左手も同様に。
出典:https://gripped.com/news/climbing-fitness-2-climbers-elbow/
1.正座して、両手を膝の前につく。このとき、指を自分の方向へ。
2.手に軽く体重をかける。そのままの姿勢で数十秒キープ。
首
1.右手を頭の左側に当て、ゆっくりと頭を右のほうに倒して数秒キープ。
2.斜め右45°の方向に頭を倒し、20秒キープ
3.左も同様に。
4.最後に両手を頭の後ろにもって行き、ゆっくりと前に倒して20秒キープ。
肩甲骨
1.腕を横に伸ばし、手首を90°に曲げます。
2.手のひらで円を描くようにして、ゆっくりと肩から大きく回します。
3.前まわし、後ろまわしを数回ずつ。
背中

Woman Practicing Yoga Stretch ca. 2001
1.ひざと両手を肩幅に開いて四つんばいの姿勢に。
2.腕をその位置に残したまま、お尻を床に下ろしていきます。
3.そのままの姿勢で数十秒キープ
1.両手を体の前で、大きなボールを抱えるように組む。
2.手を前に、背中を後ろに引っ張って、そのままの姿勢で数十秒キープ。
胸
出典:http://stretchpole-blog.com/presleep-stretch-2212
1.両手を体の後ろで組む
2.そのまま手をさらに後方へ引っ張る。そのままの姿勢で数十秒キープ。
ハムストリングス
出典:https://plaza.rakuten.co.jp/bamosabailar/diary/?ctgy=4
1.座った姿勢から右脚を前方に伸ばし、左足は軽く膝からたたみます。
2.腰、背中をまっすぐに伸ばしたまま、状態をゆっくり、伸ばした右脚のほうに倒します。
3.両手で足の裏をつかみます。難しい人はタオルを使ってもOK。数十秒キープ。
4.左脚も同じように伸ばします。
前もも
1.仰向けに寝転がります。
2.そのままの姿勢で、右脚を体に沿って膝から曲げます。数十秒キープ。
3.左脚も同じように伸ばします。
お腹
出典:http://blog.livedoor.jp/stretch0606/archives/cat_10013060.html
1.うつぶせに寝ます。
2.両手のひらをそれぞれのわきの下あたりにおいて、ゆっくりと上半身を持ち上げます。
3.あごをそらして、お腹の筋肉を伸ばすようなつもりで、数十秒キープ。
お尻
出典:http://honolulu-m-guide.blog.so-net.ne.jp/archive/c2300151807-1
1.仰向けに寝転がる。
2.そのままの姿勢で、両膝を胸の前あたりで、両腕で抱えて数十秒キープ。
3.肩膝ずつ行ってもいいでしょう。
骨盤・股関節
1.両膝立ちから右足を前に出して、膝を90°に曲げます。
2.腰はまっすぐ正面に
3.脚の付け根を伸ばすつもりで、床に着いた足は気持ち後ろに。
4.背中は真っすぐに伸ばして数十秒キープ。
5.逆脚も同じように行います。
腰
1.仰向けに寝転がる。
2.右脚の膝および付け根をそれぞれ90°に曲げる。
3.2.の脚を、反対側に倒します。
4.両肩を床につけた状態で数十秒キープ。
5.逆の脚も同じように行う。
アキレス腱
1.正座の姿勢から、片膝立ちになる。
2.自分の胸で、太ももを押すようにして、数十秒キープ。
3.逆の脚も同じように行う。
内腿
1.膝を折ってしゃがみ、右脚を真横に伸ばす。
2.そのままの姿勢で数十秒キープ。
3.逆の脚も同じように行う。
各部位はゆっくり伸ばすほど柔らかくなり、脂肪が燃えやすい体になります。取り組む際には、自分なりによりリラックスできる工夫を加えるのもいいでしょう。アロマやお香を焚いたり、ゆっくりめのお気に入りの曲をかけたり、照明を抑え目にしたりするのもオススメです。
ストレッチを行う際の注意点
飲酒をした場合は控える
毎日の習慣にするのがいいとはいえ、お酒を飲んだ日は控えたほうが正解。お酒を飲むと、血中アルコール濃度が高まります。つまり、血液のなかにアルコールをいつもよりも多く含んだ状態になるのです。そんなとき、血行がよくなるストレッチをすると、アルコールが体中を勢いよく駆け巡ることに……。翌日は二日酔い、なんてことにもなりかねません。お酒のあとのストレッチは止めておきましょう。
体調不良の際は控える
体のどこかの部位にケガをしていたり、発熱していたり……。体調がイマイチよくないときは、絶対にムリをしてはいけません。いくらストレッチが体にいいとはいえ、ケガや体調不良を治す効果はありませし、体の不調を増長させる結果にもなりかねません。完全に復調してから、再びストレッチに取り組むようにしてください。
ムリに伸ばさない
結果を焦るあまり過度に負荷をかけてしまうと、筋や腱を傷めてしまうことも。ストレッチはあくまで気持ちいい程度の強さがベストです。また、強さよりもむしろ、長めに行うことを意識したほうが効果は上がります。強さの目安は個人差があるのでなんともいえませんが、長さは、まずは20秒から30秒を意識してみてください。きっと、体が変わっていくのが実感できるはず!
まとめ
ストレッチ、いかがでしたか? やってすぐに5kg10kgと体重が落ちるようなことはなくても、太りにくくなったり、体のラインが整ったり、寝つきがよくなったり、その効果は多岐に渡ります。ぜひ、ムリのないところから始めてみてくださいね!